屋根の点検、業者を上がらせる前に決めること|地上から分かること・分からないこと【さいたま市】
📅 2026年9月8日|本記事は制度・法令については同日時点の情報をもとにしています。契約や法律に関わる個別のご相談は、お住まいの消費生活相談窓口や専門家へお願いいたします。
台風が過ぎたあと、家の前に出て屋根を見上げる。何かおかしい気もするけれど、地上からでは判断がつかない。そこへ「無料で点検します」と声がかかる——という流れは、うちにご相談をいただく方からよく聞く話です。
この記事は、業者が善いか悪いかという話ではありません。点検という作業の中身の話です。屋根に上がられた瞬間、施主のみなさんから現場は見えなくなります。だから、上がる前に決着をつける。私が現場でそう考えている理由を書きます。
屋根の点検には、ひとつだけ他の工事と決定的に違うところがあります。施主が立ち会えないという点です。
外壁なら、指をさして「ここですか」と聞けます。屋根はそうはいきません。はしごを掛けて上がってしまえば、そこから先は業者しか見ていない世界です。手元に残るのは、業者が撮ってきた写真と説明だけになります。
これは悪意のあるなしとは関係のない、点検という作業の構造です。うちのような地元の工務店が上がっても同じことで、だからこそ私は上がる前にどれだけ話を詰められるかを大事にしています。上がられたあとで「その写真は本当にうちの屋根ですか」と聞くのは、かなり難しいからです。
「屋根なんて上がらないと分からないでしょう」と言われることがありますが、そんなことはありません。地上から、あるいははしごの上から軒先を覗くだけでも、けっこうな範囲が分かります。
望遠のきくカメラかスマホ、双眼鏡があれば、次のあたりは施主のみなさんご自身でも確認できます。
- 棟板金の浮き……屋根のてっぺんの金属が、波打っていないか。釘が飛び出していないか
- 瓦のズレ・ずり落ち……一列に並んでいるはずの瓦の目地が、そこだけ揃っていないか
- 棟の歪み……屋根の頂点のラインが、真っ直ぐに通っているか
- 雨樋の垂れ・外れ……軒先のラインに対して、樋が波打っていないか
- 外壁の目地切れ……サイディングの継ぎ目のコーキングが、切れていないか
- 軒天のシミ・剥がれ……軒先の裏側の板が、変色していないか
台風のあとに気になるものの大半は、この範囲に入ります。ドローンを使えば屋根面全体を上から撮れますので、「上がらないと何も分からない」は正確ではありません。
ちなみに、うちが実際にどういう順序で屋根を見ているかはコロニアル屋根のカバー工法──屋根点検でプロが見ているポイントに手順として書いてありますので、比べてみてください。
ここは正直に書きます。上がらないと絶対に分からないことも、確かにあります。「上がろうとする業者は怪しい」という単純な話にしてしまうと、必要な点検まで断ることになってしまいます。
| 確認したいこと | 地上・ドローン | 上がらないと分からない理由 |
|---|---|---|
| 谷板金の腐食 | △ | 屋根と屋根が合わさる谷の底。上から見下ろさないと、穴や錆の進み具合が見えません |
| 野地板の傷み | × | 踏んだときの沈み込みで判断します。目ではなく足で分かる情報です |
| ルーフィングの状態 | × | 屋根材の下の防水紙です。めくらないと見えません |
| 棟の漆喰の奥 | △ | 手前は写りますが、痩せや剥離の深さは近づかないと分かりません |
| 釘・ビスの効き | × | 浮いて見えなくても、触ると動くことがあります |
足で踏んだ感触と、手で触った動き。この2つは画質を上げても写真に写りません。ですから「上がらせない」が正解なのではなく、上がる理由を説明できる相手なら上がってもらう、というのが実際のところです。
上がってもらうと決めたとして、その前に施主のみなさんができることが3つあります。どれも数分で済みます。
- 1. どこを・何のために見るのかを、口で言わせる……「棟板金の釘が浮いていないかを見ます」のように具体的に返ってくるか。「とりあえず全体を」しか出てこないなら、まだ上がってもらう段階ではありません
- 2. 上がる前の全景を、自分で撮っておく……地上から、屋根全体が入るように1〜2枚。あとで受け取る写真と突き合わせるための、比較の元になります
- 3. 撮影データを日時付きで受け取ると伝えておく……上がる前に言っておくのが肝心です。スマホの写真には撮影日時が記録されますので、「あとで日付が分かる形でいただけますか」と一言
降りてきた業者に、スマホやタブレットで写真を見せられる。傷んだ箇所のアップを次々に見せられれば、たいていの方は「うちの屋根はこんなことに」と思ってしまいます。
見るところは、傷んだ箇所ではありません。その写真に、うちの家の特徴物が写っているかです。
- テレビアンテナの位置と形
- 天窓(トップライト)の有無と位置
- 煙突・換気フードの位置
- 隣家との距離感、隣の屋根の色や形
- 電線がどちらから引き込まれているか
- 屋根材の色と、太陽光パネルの有無
アップの写真ばかりで、こうした周りが一切写っていないとき。「引きの写真も見せてもらえますか」と聞いてみてください。屋根全体が入った1枚があれば、4番でご自身が撮った全景と並べるだけで、同じ家かどうかは一目で分かります。
ここは、資格を持って仕事をしている立場から、どうしても書いておきたいところです。
スレート屋根(コロニアルなどの薄い板状の屋根材)には、古いものだと石綿——アスベストが含まれていることがあります。石綿と、石綿を重量の0.1%を超えて含有するすべての物は、労働安全衛生法施行令の改正により2006年(平成18年)9月1日から製造・使用等が禁止されました。それ以前に葺かれた屋根には、含まれている可能性があるということです。
なお建築物については、令和5年(2023年)10月1日以降に着工する工事から、石綿の事前調査は所定の講習を修了した調査者などが行うこととされています。私も建築物石綿含有建材調査者の資格を持って現場に入っています。調査義務そのものは100万円以上のリフォームはアスベスト調査が義務ですをご覧ください。
最後に、玄関先でそのまま使える言い方を挙げておきます。長い理由は要りません。短く、同じことを繰り返すのがいちばん通ります。
- 「かかりつけの業者に頼んでいますので、結構です」
- 「今日は判断しません」
- 「屋根に上がるのはご遠慮ください」
3つ目は、この記事の主題そのものです。点検自体を断らなくても、上がることだけを断るという選択があります。地上までは受ける、そこから先は改めて。この区切り方ができれば、慌てて決めずに済みます。
そして、断って態度が変わるなら、それが答えです。粘る、声色が変わる、「今日じゃないと」と急かす。まっとうな業者なら、断られても「またご縁がありましたら」で帰ります。
訪問営業そのものへの向き合い方は「無料点検に来ました」は詐欺かもしれない、契約前の確認事項はリフォーム契約前に必ず確認すべき6つのこと、火災保険の話を持ちかけられた場合は「火災保険でリフォームできる」は本当か、嘘か。をご覧ください。困ったときは全国共通の消費者ホットライン188で、お近くの消費生活相談窓口を案内してもらえます。
結局、上がる前にすべてが決まります
台風のあとに屋根が気になるのは当然です。その不安につけ込まれないためにいちばん確実なのは、慌てて呼ばずに済むよう、ふだんから頼める先を持っておくことでしょう(住宅のかかりつけ医を持っておくべき理由)。台風後の確認手順は【台風が過ぎたら】被害確認の手順と火災保険の使い方にまとめてあります。