リフォームが値上がりする本当の理由——ナフサと建材費の連鎖を解説
📅 掲載日:2026年3月|本記事は2026年3月末現在の情報を基に作成しています。資材価格・制度は変更される場合があります。最新情報は各メーカー・担当窓口にご確認ください。
「ナフサ危機」という言葉を、最近ニュースで見かけた方も多いのではないでしょうか。ヤフーニュースでも取り上げられるほど注目されており、「リフォームへの影響はどうなの?」と心配されている方も多いと思います。
結論から言うと、影響はすでに出始めており、本格化はこれからです。塗料・断熱材・雨樋・防水材など、リフォームで使うほぼすべての建材が石油由来のため、ナフサ(石油化学の基礎原料)の価格高騰は業界全体に波及します。
今どういう状況で、今後どうなりそうか——現場の肌感覚もまじえて整理します。
ナフサ(naphtha)とは、原油を精製する際に生まれる石油化学の基礎原料です。ガソリンや軽油と同じ石油由来ですが、ナフサは化学製品の出発点として使われる点が特徴です。
ナフサ→建材への流れ
ナフサを加熱分解するとエチレン・プロピレンなどが生まれ、これらが重合して樹脂(プラスチック)になります。住宅建材の多くはこの樹脂を原料としています。
つまりナフサの価格が上がれば、その影響は石油化学製品全体に波及します。住宅建材の多くは川下にあたるため、原料高騰の影響を受けるまでに時間差が生じるのも特徴です。
きっかけは、2026年2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始したことです。これにより中東の原油輸送ルートが事実上封鎖され、日本への原油・ナフサの供給に深刻な不安が生じました。
日本は輸入する原油の約9割を中東に依存しています。戦争勃発直前(2026年2月27日)の原油価格は1バレル67ドルでしたが、わずか1週間余りで110ドル近辺まで急騰。2026年3月末時点では126ドル台で推移しています。
(2/27→3月末・約2倍)
(2026年3月6日・東京オープンスペック)
国内メーカーも動き始めている
戦争勃発から約2週間で、出光興産・三井化学・三菱ケミカルグループなど大手石油化学メーカーが相次いでエチレンの減産を発表しました(2026年3月17日・Bloomberg報道)。ナフサを原料とするエチレン生産拠点12か所のうち、半数が減産している状況です。
さらに2026年3月24日には、高市早苗首相がナフサをはじめとした石油関連製品の供給網確保に向けた対応方針の取りまとめを経済産業大臣に指示しています。政府が動かざるを得ないほど、事態は深刻です。
出典:Bloomberg「ナフサ不足は『炭鉱のカナリア』」(2026年3月17日) / Bloomberg「中東混乱収まらず、日本政府は試行錯誤」(2026年3月24日) / 日本経済新聞「アジアのナフサ価格に上昇圧力」(2026年3月7日)
「屋根・外壁リフォームと石油って関係あるの?」と思われるかもしれません。ところが使用する建材のほとんどが石油由来です。
2021〜2022年のウッドショックは記憶に新しいと思います。あのとき値上がりしたのは木材だけでした。今回のナフサ問題は影響の範囲が根本的に異なります。
対象素材:木材のみ。新築の構造材・造作材を中心に影響。外壁塗装・屋根工事への波及は限定的。代替素材への切り替えが比較的しやすかった。
対象素材:石油由来の建材すべて。塗料・断熱材・雨樋・防水材・コーキング材を横断的に直撃。代替素材への切り替えが難しく、影響が長期化しやすい。
業界内では「影響範囲はウッドショックを上回る可能性がある」との見方が広がっています。木材の場合は国産材への切り替えという選択肢がありましたが、石油化学製品の代替は容易ではありません。
ナフサ価格の上昇が実際の製品価格に反映されるまでには、1〜3か月程度のタイムラグがあります。2026年春の原油高騰が建材価格に本格的に転嫁されるのは、夏以降になると見られています。
今の見積もり金額が3か月後も維持される保証はありません。ポリエチレン・ポリプロピレンはすでに1kgあたり15円以上の引き上げ局面にあり、値上がりが続く前提で計画を立てることが重要です。
「どうせ上がるなら先送りしよう」という発想は逆効果です。屋根・外壁は劣化が進めば進むほど修繕費が跳ね上がります。塗膜が切れれば下地まで傷み、コーキングが割れれば雨水が内部へ侵入します。値上がりを先送りしながら、同時に工事費も上昇していく——という最悪のシナリオを避けるためにも、早めの行動が現実的です。
- 今の価格水準で見積もりを取り、具体的な金額を把握する
- 使用する塗料・断熱材の供給状況をあわせて確認する
- 補助金(先進的窓リノベ・給湯省エネ等)が使える工事は早期申請を検討する
- 劣化が進んでいる箇所から優先順位をつけて計画を立てる
価格の高騰はもちろん避けてほしい。でもそれ以上に子を持つ身として、子を亡くす親も、親を亡くす子の姿も見たくないものです。一日も早い戦争の終結を願います。